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Secure Minions: Ollamaとフロンティアモデルのプライベートコラボレーション
Secure Minions: Ollamaとフロンティアモデルのプライベートコラボレーション
2025年6月3日、スタンフォード大学のHazy Research labが、AIプライバシーの分野で画期的な成果を発表しました。Secure Minionsと呼ばれるこの新しいプロトコルは、ローカルのOllamaモデルとクラウドのフロンティアモデルを、完全にエンドツーエンド暗号化された環境で連携させることを可能にします。
Minionsプロトコルとは?
3ヶ月前に発表された元のMinionsプロトコル(ICML 2025)は、ローカルのOllamaモデル(例:Google Gemma3:4b)とクラウドのフロンティアモデル(例:GPT-4o)を接続する仕組みでした。
主な特徴:
- コスト削減: クラウドコストを5〜30倍削減
- 高い精度: フロンティアモデルの98%の精度を維持
- ローカルファースト: 機密コンテキストはデバイス内に留まる
しかし、元のプロトコルでは一部の情報がクラウドに送信されており、完全なプライバシー保護とは言えませんでした。
Secure Minionsの革新性
Avanika NarayanとDan Bidermanら研究チームは、「クラウドプロバイダー自身からも情報を隠すことは可能か?」という問いに挑戦しました。彼らが開発したSecure Minionsは、NVIDIA Hopper H100 GPUの機密コンピューティングモードを活用した包括的なセキュリティプロトコルです。
セキュアプロトコルの仕組み
- 鍵交換: ローカルデバイスとH100 GPUが暗号化鍵を交換
- リモート証明: GPUが本物でセキュアモードで動作していることをリモート証明で検証
- セキュアエンクレーブ: H100がセキュアエンクレーブとして機能し、すべてのメモリと計算が暗号化される
- エンドツーエンド暗号化: ローカルLLMのメッセージは暗号化されてGPUエンクレーブに送信され、安全に復号・処理される
重要なのは、プレーンテキストが一切露出されないことです。送信中も、リモートLLM推論中も完全に保護されます。
パフォーマンス
驚くべきことに、長いプロンプト(約8,000トークン)や大型モデル(Qwen-32B)を使用しても、オーバーヘッドは最小限です:
- 追加レイテンシは1%未満
機密LLMコラボレーションは、もはや理論的なものではなく、実用的な技術として実現されています。
実装と使用方法
セットアップ
# リポジトリをクローン
git clone https://github.com/HazyResearch/minions.git
cd minions
# 仮想環境の作成(オプション)
python3 -m venv .venv
source .venv/bin/activate
# パッケージのインストール
pip install -e .
# Ollamaとモデルのインストール
ollama pull gemma3:4b
アプリでのセキュアプロトコル実行
streamlit run app.py
ブラウザが開いたら:
- Remote Providerを"Secure"に設定
- Secure Endpoint URLを
http://20.57.33.122:5056
に設定 - ローカルクライアントをOllamaに設定
プログラムでの使用例
from minions.clients.secure import SecureClient
from minions.clients.ollama import OllamaClient
from minions.minion import Minion
# セキュアクライアントの設定
remote_client = SecureClient(
endpoint_url="http://20.57.33.122:5056",
verify_attestation=True,
)
# ローカルクライアントの設定
local_client = OllamaClient(model_name="gemma3:4b")
# プロトコルの初期化
protocol = Minion(
local_client=local_client,
remote_client=remote_client
)
# タスクの実行
task = "彼はグランドスラムを何回勝ったか?"
context = """田中一郎は、伝説的なテニス選手として知られ、
強力なサーブと俊敏なフットワークで、キャリア中に合計20回の
グランドスラムタイトルを獲得した..."""
output = protocol(
task=task,
doc_metadata="file",
context=[context],
max_rounds=5,
)
技術的意義
Secure Minionsは、AIプライバシーの分野における重要な前進を示しています:
- 真のプライバシー保護: クラウドプロバイダーからも情報を完全に隠蔽
- 実用的なパフォーマンス: 最小限のオーバーヘッドで高性能を実現
- コスト効率: 大幅なコスト削減と高精度の両立
- オープンソース: 研究コミュニティが検証・改良可能
まとめ
Secure Minionsは、ローカルLLMとクラウドフロンティアモデルの連携において、プライバシーとパフォーマンスの理想的なバランスを実現した画期的な技術です。機密情報を扱う企業や個人にとって、この技術は新たな可能性を開くものとなるでしょう。
技術の詳細については、Hazy Research blogの投稿およびGitHubリポジトリをご確認ください。
この記事は、Stanford Hazy Research labの研究成果を基に作成されました。最新の技術動向については、公式ドキュメントをご参照ください。